私は30才から8年間程、ペンキ屋さんをしていました。
その間に結婚して二人の子供ができました。
人間には向き不向きがありますが、
私にとってペンキの仕事は最も向かないものでした。
親方や周りの先輩方は親切にしてくれましたが、
生来の不器用が禍して、どうしても仕事が覚えられずに、
周りには迷惑をかけました。
それでも家庭を守るためになんとか頑張りましたが、
最後は心臓に異変があり、駅の階段も登れなくなってしまい、
ペンキの仕事を辞めました。
「私はなんて弱いんだろう」と思いました。
今でもちょくちょくペンキ屋さんの時の夢を見ます。
仕事にまごついてピンチになる夢です。
仕事を辞めた時に母に言いました。
「8年間無駄に過ごしちゃったね。」
母は言いました。
「でも他人に優しくなれたんじゃない?」
家族には絶対に見せたくなかった情けない自分の姿を思い出しますが、
もしかしたら貴重な経験をさせていただいたのかもしれませんね。